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遠賀川流域活動団体報告会

日時    平成22年12月4日(土) 13:30〜
場所    のがみプレジデントホテル (飯塚市新飯塚)
主催    NPO法人遠賀川流域住民の会

基調講演 
       テーマ  自然再生事業「アザメの瀬」の取り組みについて
       講師   穴井 利明氏  国土交通省武雄河川事務所 建設専門官

事例発表
       ・遠賀川流域交流について
           原 和彦氏  ひびき青年会議所  未来創造委員会委員長
       ・遠賀川に学び生きる
           大野 通孝氏 中間ほたる・メダカの会
       ・ゴミ減量作戦「葦の利活用について」
           安部 和義氏 嘉穂水辺の楽校周辺の環境を守る会
       事例発表はこちらから
       
情報交流会

 
開会式のあいさつ。NPO法人遠賀川流域住民の会理事長 窪山氏。
「2010年度の取り組みで、遠賀川流域住民の会は8月から、3回にわたって、遠賀川源流の森再生応援団として、嘉麻市千手で竹林の整備、伐採、そして竹炭造りを行いました。伐採した竹を集めたり、窯に入るぐらいの大きさに竹を切ったりと作業はきついものでしたが、3回とも地元の高校生に手伝っていただきました。「1回目、2回目、3回目と回を重ねるごとに高校生は主体的に仕事をしていただき、本当に感動しました。」と話されていました。
竹炭は全部で約200袋、河川の浄化に役立てようと、竹炭を川に沈めて頂ける団体をも募集しているとのことです。

 国土交通省遠賀川河川事務所 近藤修所長のごあいさつで「12月1日13時ごろ、直方市の河川事務所の前の遠賀川で全長約70cmの鮭が泳いでいるのが発見されました。弱っているために保護しましたが16時30分に死んでしまったため、冷凍しました。12月13日に開催される「鮭献祭」に奉納することになります。」と報告されました。今年も本物の鮭が奉納されることができて嬉しい便りでした。

基調講演
テーマ  自然再生事業「アザメの瀬」の取り組みについて
講師 穴井 利明氏 国土交通省武雄河川事務所 建設専門官


講師の穴井氏

 平常時のアザメの瀬地区  洪水時のアザメの瀬の様子

佐賀県の北部を流下し玄界灘に注ぐ松浦川は幹川流路延長47km、流域面積446km、流域市町村3市4町1村、流域内人口10万人です。
松浦川は、昔から“暴れ川”で流域の人たちはたび重なる洪水に悩まされてきました。今回のプロジェクトで、自然を再生することになったアザメの瀬は、松浦川の河口から約15.8kmの所で、武雄市相知に位置します。

当初、治水のため川幅を広げる計画もありましたが、堤防を作ると土地がほとんどなくなってしまうため、堤防を作るのをやめて、氾濫させて、湿地地帯を再生する自然再生事業に取り組むこととなりました。

自然再生事業とは、
治水・利水を目的とする事業の中で、ミティゲーションとして川の環境保全を行うものではなく、河川環境保全を目的として、流域の視点から「川のシステム」を再自然化する初めての河川事業です。極力人間の手を入れず、自然の復元力を生かして行う事業です。
自然再生事業のポイントは、
 @隆起の視点から計画を策定する。
  流域レベルで治水機能を確保しつつ、川の再自然化を目指す。
 A順応的・階段的な事業の実施
  事業実施による自然の反応をモリタリングし、その状況に応じて順応的に見直すとともに、自然の復元力を活かし、
  段階的に事業を実施。
 BNPO等と連携
  計画の策定段階・事業実施段階及び事業実施後の段階において、
  NPOや関係機関等との意見交換及び協働による積極的な連携を図る。

昔は堤防がなかったので、川との連続性が保たれていました。水田などのは川とつながっていたため。生物にとってはよい産卵場や生息域でした。また、洪水時には川の水が溢れ、生物の避難場所であり、かく乱攪を受ける重要な場となっていました。
湿地は生物にとって貴重な環境です。

現在では、人間にとって必要な河川改修が行われ、堤防で水田や湿地と川の連続性がなくなってしまいました。このため、かく乱もなく、安定した環境に、川の生きもの達にとって棲みにくい環境になりました。

松浦流域でも、氾濫原的湿地が92%の減少、乾燥地帯が増え、湿性地の植物が減少、外来植物が増加してきました。


アザメの瀬の自然再生の目的は、河川の氾濫原湿地の再生を行います。クリークやワンド、たまり、湿地帯をつくり、洪水時には松浦川本川の河川の水が入り、全体が氾濫原となります。この結果、魚にとって、流れのはやい本川から避難し、隠れ場所になります。また、ナマズなどの魚類の産卵場所になります。

アザメの瀬自然再生の目標
 1・河川の氾濫原的湿地を再生
   地盤を掘り下げ、鯉・フナ・ドジョウの棲む湿地を再生。
 2・人と生物のふれ合いの再生
   昔、日本のどこにでも見られた子どもたちが動植物に触れ合える場の再生
 

平成15年度の当初計画に対し、下池及びクリークが完成し、ある程度の評価ができる状況になった平成16年度に中間分析を行っています。その結果を用いて、主な工事の最終年度にあたる平成17年度の工事着手前に計画を更新しました。

なお、主な工事が完了した平成18年度以降は、順応的管理に向けてモニタリングを実施しています。


   
 整備前 整備後 
 
 

モリタリグ調査について
モリタリング実施期間

整備前  平成14年
整備中  平成15年〜20年
整備後  平成21年〜22年
  目的   調査項目  結果
魚類の産卵場・成育の場としての機能 魚類(産卵)調査 ・平成16年から平成21年度までの産卵モリタリング調査で5種類の産卵が確認
・平成15年から平成21年度までの魚類確認種を整理した結果、
 アザメの瀬が有する環境産卵の可能性がある魚類として19種が抽出された。 

A
出水時における魚類の避難場所としての機能 魚類(生息状況)
・出水前には確認されていなかったウナギ・ボラ・カワアナゴ・ウキゴリなどが
 出水後に確認されており、出水時に避難場所として利用していると考えられる。
湿地性の植物が魚類や底生動物の生息基盤としての機能  植物
魚類
床生動物
・植生に依存する種としてギンブナ(フナの一種を含む)、
 メダカを対象として整理した結果、
 上池と下池での確認状況を比較すると植生の多い、下池において、
 フナ類やメダカが多く確認された。 
湿性植物の良好な生育場としての機能 植物(植物相
群落組成
植生) 
・降雨状況など(水面変化)により、荒地性及び湿性植物の若干の変動は
 あるものの 湿性植物は、整備後では増加傾向にある。
・創出湿地が平成16年では10%、平成21年で45%。
 検証の結果「湿性植物の良好な育成場として機能」が
 発揮されていることが確認された。
多様な種が生育・生息する豊かな生態系の場としての機能  魚類
底生動物
鳥類
両性類・爬虫類
哺乳類
陸上昆虫類
・種類の大幅な増加、整備前と比べて79種の増加が確認。
・整備初期段階で、平成21年度とほぼ同じ28種を確認。
・鳥類調査では平成19年、25種類が確認された。
・トンボ類では、整備前と比べて平成20年では、16種が増加が確認された。
  アザメの瀬では46種が確認、佐賀県全体では85種。
※モリタリングの検証の結果、氾濫原的湿地に求められる5つの機能が発揮されていることが確認されたため
  昔どこでもあった氾濫原的湿地が復元しつつあるものと考える。   

アザメの検討会は平成13年より、住民(近隣の学校・婦人会・老人会・沿岸住民)、行政(武雄河川事務所・唐津市)、アドバイザーとして学識者(大学研究者・行政研究者)が集い、現地調査、計画の策定、モリタリングの調査、維持管理の在り方など、毎月1回、徹底した住民参加型で開催されてきました。

アザメの瀬検討会での合意形成のルールです。
 ・メンバー非固定の自由参加の検討会
 ・専門家はアドバイザーとして位置付ける
 ・地元の幅広い知識を吸収する努力
 ・みんなで作り上げていく
 ・「してくれ」ではなく、「しよう」が基本
 ・繰り返し、話し合う
 ・進め方も、みんなで考え、決める

徹底した住民参加と合意形成を行います。
 ・計画の策定段階から関っているため、事業に対しての理解と興味が大きいと思われます。
 ・13年11月の第1回検討会を皮切りに22年3月末まで88回の検討会を開催してきました。
  その間行政と住民との間に信頼関係が生まれ、14年12月には住民組織「アザメの会」が発足し、
  その後NPO化され、組織管理も行っています。
 ・徹底して意見交換を行って事業を進めているため、
  事業完了後の維持管理に対する理解・姿勢も変わってくるものと考えられます。

アザメの会の取り組み
NPO法人アザメの会は平成14年12月住民組織アザメの会発足。(アザメの瀬自然再生事業をサポート)。平成17年10月、NPO法人として発展。年間行事、維持管理を中心となって活動されています。

平成22年の行事として5月:打合せ。6月:自然再生事業・田植え学習会、田植え。8月:夏休み環境教育・田の草取り。10月:包み返し。11月:稲刈り・九州のワークショップ。12月:収穫祭。NPO法人アザメの会を中心にとして、小学校、大学、行政が連携して活動されています。

近隣の学校との連携で、環境学習は小学校4年生、たんぼの楽校は小学校5年生で行われています。
大学との連携では夏休み環境教室を開催して、生物調査を実施しています。また、地元の伝統行事「堤返し」「イダ嵐」そして郷土料理など地元の人たちが協力して催されています。
みんなで作り上げたアザメの瀬、川を通して人との関わりを深め、大人から子どもまで多様な動植物に触れ合える憩いの場ができました。